ペットの病気

猫のかかりやすい病気(下部尿路疾患)

#■猫の下部尿路疾患について■
猫下部尿路疾患は膀胱や尿道に何らかの問題がある状態をいい、一般的には猫の膀胱炎、尿道炎や尿石症のことを指します。膀胱炎は結石や結晶による刺激によるもの、細菌感染によるもの、理由のはっきりしない原因(特発性といいます)で起こるものなどがあります。その中で猫に最も多いと思われる下部尿路疾患は結石や結晶によって膀胱粘膜や尿道粘膜を傷つけてしまうタイプのものです。

写真:尿道閉塞を起こし、腎機能が悪化してしまった症例。導尿処置後に入院し、点滴治療を行っています。

□症状?

#1)トイレの回数が増える。排尿時間が長い。
2)尿が出ない。尿が出にくい。少ししか出ない。ポタポタと出る。
3)排尿時に鳴く。
4)トイレ以外での失敗。
緊急)おう吐や元気食欲の低下がある場合には腎不全や尿毒症が疑われるので様子をみてはいけません。

□尿路結石や結晶とは?

#尿の中には様々な老廃物が捨てられますが、その中のアンモニウムやマグネシウム、カルシウムなどのミネラルの濃度が濃くなりすぎると尿の中で結晶化します。この結晶が集まってしまうと結石になります。この結晶や結石は膀胱や尿道粘膜を刺激し、傷つけ炎症を引き起こします。炎症が強くなると尿に血が混じったり、血尿が認められます。
猫で認められるミネラルの結晶の多くははストルバイト(リン酸アンモニウムマグネシウム結晶)とシュウ酸カルシウム結晶で、ストルバイトは尿のアルカリ化で結晶化しやすく、シュウ酸カルシウムでは尿のpHに影響されず結晶化されます。

写真:猫の尿検査で認められる結晶の顕微鏡像(左がストルバイト。右がシュウ酸カルシウム)

□結晶や結石はなぜできてしまうか?

#食事の内容や与え方、飲水量不足、尿路感染、ストレスなどの様々なものが影響していますが、A)尿中に排泄されるミネラルが多い、B)尿量が少ない(尿が濃い)、C)尿のpHが酸性やアルカリ性に傾くという3つが直接の原因と現在のところ考えられています。イエネコの起源は水の少ない砂漠地帯に住んでいたリビア山猫という説が本当であれば、上記の3つの直接の原因は猫という種類の動物の特徴とおきかえることができると思われます。

写真:左は尿中に沈殿しているストラバイト結晶(肉眼でもさらさらした砂のようなものが確認できます)。右は膀胱炎を繰返す猫の尿中に排泄された1.5mmくらいの結石

□下部尿路疾患の治療?

#まず、炎症によって動物に苦痛が認められますので、炎症緩和のための治療(消炎)を行い、並行して感染が疑われれば抗生物質の投与を行う場合があります。また、結晶や結石によるものであれば、尿検査結果をもとに適切な対応治療食が処方されます。尿道閉塞を起こしてしまった場合には閉塞解除のためのカテーテルなどによる導尿処置が並行して行われます。また、薬物療法や食事療法を行っても症状が好転せず尿道閉塞の再発を繰返す症例については会陰尿道瘻形成術を行う必要があります。

写真:内科的治療によって、改善が認められず尿道閉塞を繰返す症例は閉塞による腎不全などを回避する目的で手術が行われます。

□アドバイス

#普段からできるだけ尿が濃くならないようにするためにペットが水を飲みたいときに飲める、尿をしたいときにできる環境を用意することが重要です。そして、毎日飲水量、尿のチェック(尿量、色など)をするように心がけましょう。 また、血尿や頻尿が起こっていなくても、尿検査で潜血反応や結晶(ミネラルが固まったもの)が出ているかもしれません。定期的な尿検査を受けることで見えない異常をチェックすることができます。結石予防フードだけを与えていれば予防ができるとは限りませんので、6ヶ月〜1年に1回は動物病院で尿の検診を受けるようにしましょう。特に雄猫の尿石症では尿道閉塞を起こし、発見が遅れると命にかかわる場合がありますので注意してください。

写真:左は雄猫の通常外陰部。右は会陰尿道瘻形成術を受けた症例の外陰部(この手術を受けることで、尿道は広がり尿道閉塞の危険を回避できます。